監督:イムティヤーズ・アリー Imtiaz Ali
出演:カールティク・アールヤン、サーラー・アリー・カーン、アールシー・シャルマー
2020年2月14日公開
トレイラー
ストーリー
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バーで出会ったゾーエー(サーラー・アリー・カーン)とヴィール(カールティク・アールヤン)はいい雰囲気になり、一夜を共にするためヴィールの家に行くが、ヴィールが「ここまで来て寝ようとしない」とゾーエーを怒らせてしまう。あとでコワーキングスペースで出会ったときも大げんか。しかし、それでもヴィールは就職の面接に行くゾーエーを送っていく。そんなこんなで続いていく「今の恋」。
1990年のウダイプル。ラグー(カールティク・アールヤン)はリーナー(アールシー・シャルマー)を口説き落とし、秘かにデートをするようになる。しかし、やがてリーナーはデリーに移ることに。ラグーはすべてを捨ててリーナーを追いかけデリーに向かう。デリーでラグーはリーナーと一緒に暮らし始めるが。都会の誘惑に翻弄される「昔の恋」。
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イムティヤーズ・アリー監督は10年ほど前にサイフ・アリー・カーン、ディーピカー・パードゥコーン主演で【Love Aaj Kal】(2009)(恋愛今昔)をヒットさせましたが、今回それと全く同じタイトル(「2」「Again」「Returns」などが付かない)の作品を作りました。続編でもリメイクでもなく、「リブート」といった感じでしょうか。
出演者は前作から全交代。主演はいま好調のカールティク・アールヤン、ヒロインはサーラー・アリー・カーン。キャリア3作目にして大役です。ランディープ・フーダーはイムティヤーズ・アリー監督作品では【Highway】(2014)に出演しています。
旧【Love Aaj Kal】は現在と過去の平行する2つのラブストーリーを同じ俳優(サイフ・アリー・カーン)にやらせるという斬新なフォーマットでした。新【Love Aaj Kal】もまったく同じフォーマットを採用しています。新【Love Aaj Kal】では現在のストーリーは現代(2020年?)、過去のストーリーは1990年(30年前)に設定されています。このフォーマットによりカールティクの2役が見られるし、過去の主人公が実は現在のランディープ・フーダーであることが明かされるため結末が知りたくなります。このようにこのフォーマットの効果は新作でも十分に発揮されていたと思います。
現在編はキャリアの野心満々の肉食女子と不思議系男子のあいまいラブストーリー。過去編は田舎の純朴な恋愛から始まり、それが都会に出て・・・。こちらは結末は伏せておきます。
旧【Love Aaj Kal】で現在と過去のストーリーを平行させたのは、まったくスタイルの違う恋愛を示しておきながら、最後には「時代は移っても恋愛の本質は同じ」ということが伝わりました。いっぽう、新【Love Aaj Kal】ではそこまでのストーリーの一致はありませんでした。確かに現在編は今風、過去編は昔風ラブストーリーですが、それを平行させる意味は見えませんでした。それとも見える人には見えるのでしょうか。
出演者はまずまず良かったと思います。ただ、カールティクの現在編の役は難解なので、演じるのはさすがに難しかったように思います。サーラーは向いている役だったので、大役をこなせました。一番良かったのはランディープ・フーダー。過去のランディープをカールティクが演じるため登場時間はそれほど多くありませんが、現在と過去をつなぐ役割を存在感抜群で演じていました。
旧【Love Aaj Kal】から10年以上が過ぎ、その間にはイムティヤーズ・アリー監督自身の作品も含め、同作の影響を受けた多くのラブストーリーが出てきました。そうした中でさすがに昔のフォーマットの良さだけでは十分ではないのでしょう。
しかし、それでもアリー監督作品ならではの映像の美しさや出演者のフレッシュな演技など見どころはあると思います。また、旧【Love Aaj Kal】を観ている人は、ボリウッド恋愛映画のいま昔を考察してみてもいいかもしれません。
音楽
音楽は旧作と同じプリータム。旧作をまるごとカバーした「Yeh Dooriyan」、いくつかのフレーズを取り入れた「Haan Main Galat」など、旧作の音楽を聴いていた人向けのサービスもあります。
「Haan Main Galat」
旧作から「Twist」のフレーズ(といってもさらなる元は有名なコブラ・ソング「Man Dole Mera」ですが)を取り入れています。
「Shayad」
新旧作の間の時間の移り変わりを象徴する存在が今やボリウッドのエース・シンガーのアリジート・シン。旧作のときにはアリジートはまだ歌手デビュー前でした。
「Yeh Dooriyan」
少し調子を変えていますが旧作の「Dooriyan」の完全なカバー。歌も同じモーヒト・チャウハーン。
カールティク・アールヤン ヴィール / ラグー役
確実に人気が上がってきた最近の作品を含め、これまではラブコメ一辺倒だったカールティクが初のシリアスに主演です。ただ、アリー監督も180度の転換は求めなかったのか、旧作のサイフとは違った意味でつかみどころのない男の役になりました。かなり難しい役だったのではないかと思います。
サーラー・アリー・カーン ゾーエー役
父の出演作のリメイクに娘が出演という珍しい形になりました。サーラーにとって本作はこれまでの出演2作に比べてはるかに大役でした。途中、ぎこちないところはありましたが、なんとか大役を演じとおしたことは評価できます。旧【Love Aaj Kal】でもディーピカーはなんとか演じ通し、俳優開眼のきっかけになったことを考えると、サーラーにとっても本作がそうなるかもしれません。
アールシー・シャルマー リーナー役
旧【Love Aaj Kal】と同じく(後述)アリー監督の「隠し玉」で、本作までまったく知られていませんでした。しかし、作中ではサーラーに負けない印象を残しました。作中では暗めの役でしたが、本人はインタビューなどで見ると上品でかわいらしい感じ。本作だけではなんとも言えませんが、今後も脇役で出てくるかもしれません。
ランディープ・フーダー ラージ役
イムティヤーズ・アリー監督作品では【Highway】(2014)に出演し、素晴らしい演技を見せました。それ以来久々の出演となりますが、アリー監督が信頼しているのがわかるような役どころで、またそれに応える名演技。全体に軽めな作品にしっかりとした起点を作るような役でした。
新【Love Aaj Kal】では過去編のヒロイン役アールシー・シャルマーはこれまでほとんど無名ながら印象的な役になりました。実は旧【Love Aaj Kal】でもセカンド・ヒロイン(過去編のヒロイン)には逸話があります。旧【Love Aaj Kal】でもとても可愛いと話題になりましたが、その時には女優の名前すらわかりませんでした。こちらもアリー監督の隠し玉でブラジル人モデルのジゼル・モンテイロであるとわかったのは公開後しばらくたってからのこと。ジゼル・モンテイロはその後【Always Kabhi Kabhi】(2011)に出演しましたが、現在では帰国しているそうです。
本作主演のサーラー・アリー・カーンは旧【Love Aaj Kal】主演のサイフ・アリー・カーンの娘。同一監督の同名作品に父娘がそれぞれ主演というのはまずないのではないでしょうか。ところで、娘が主演した新【Love Aaj Kal】を公開前の試写で観たサイフは感想を聞かれ、「俺のやつ(旧作)のほうがいいな」と答えたそうです。大人げないというかサイフらしいというか、笑ってしまうエピソードが残っています。
【Love Aaj Kal】
旧【Love Aaj Kal】を観た人、カールティクの実力はいかにと思っている人、今回は過去編のヒロインも見逃さないという人、1990年が「過去」という設定に焦っている人、おすすめです。