
監督:アーディティヤ・ダット Aditya Datt
出演:ヴィドゥユト・ジャームワール、アダー・シャルマー、アンギーラー・ダル、グルシャン・デーヴァイヤー、ファリーナー・ワズィール
2019年11月29日公開
トレイラー
ストーリー
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ムンバイ警察が逮捕したテロリスト容疑者の取り調べで、インドでの大規模なテロ計画が進行中であることが明らかになった。容疑者はロンドンから発信されたのビデオ・メッセージに従って活動していたため、テロ計画の首謀者はロンドンを拠点にテロ計画を実行しようとしていると推定された。だが首謀者が誰であり、いつどのようなテロが行われようとしているのかはまったく手がかりがなかった。首謀者の特定とテロ計画阻止という重大かつ困難な任務を遂行するため、カランヴィール・シン・ドーグラー(ヴィドゥユト・ジャームワール)は、銃撃戦スペシャリストのヴァヴナー(アダー・シャルマー)と共にロンドンに派遣される。
その頃ロンドンではテロの首謀者ブラーク(グルシャン・デーヴァイヤー)はインドからの調査員の派遣を予期しており、その特定と抹殺に動き始めていた。
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ヴィドゥユト・ジャームワールのリアルなアクションが評判になった【Commando: A One Man Army】(2013)から続くシリーズ第3弾。2作目【Commando 2: The Black Money Trail】(2017)
アダー・シャルマーは2作目からの連続出演。また【Love per Square Foot】(2018)(ネットフリックス『平方メートルの恋』)のアンギーラー・ダルも出演。そして敵役に【Hunterrr】(2015)、【Mard Ko Dard Nahi Hota】(2019)(邦題『燃えよスーリヤ』)の個性俳優グルシャン・デーヴァイヤー。
【Commando】シリーズはヴィドゥユト・ジャームワールの本格アクションが売りのシリーズです。インド映画のアクション・シーンといえばスタントマンによるものか、俳優をワイヤーで吊ったり(かつスローモーション多用)するワイヤー・アクションが主流の中、【Commando: A One Man Army】(2013)はヴィドゥユト自身がすべてのアクションシーンをワイヤー無しでこなすという離れ業で観客を驚かせました。
続編【Commando 2: The Black Money Trail】(2017)はモディ首相が2016年11月に実施した裏金撲滅のための高額紙幣廃止措置の記憶が新しい時期に海外不正蓄財をテーマにするというタイミングの良さだったにもかかわらず、肝心のヴィドゥユトのアクション・シーンが少なく、作品としては平凡なものに終わりました。
もう次はないかと思っていたら矢継ぎ早に3作目を出してきました。それも1作目のようなアクション満載作でした。インド政府によるジャンムー・カシミール州自治権停止そちから数カ月しかたたないうちに政府に不満を持つイスラム教徒をテーマにするタイミングの良さは本作でも健在。もっとも、アクションが戻ったことに比べればそれもさして重要ではないかもしれません。
作品のオープニングからいきなりアクション。オープニングのアクションというと007シリーズが有名ですが、本作のオープニングはそんな007シリーズの颯爽としたアクションとはほど遠く、ヴィドゥユト演じるカランと筋肉ムキムキのレスラーたちとの1対多数バトル。
特にカランたちがテロ首謀者を探す目的でロンドンに渡ってからはテロ実行が迫っているという設定で、いわば常にタイマーが動いている状態。これによってストーリーのテンポが落ちません。そして、さまざまなアクション・シーンが連続で入ってきます。ヴィドゥユトのアクションが見どころなのは当然として、本作では女性出演者2人もしっかりアクション・シーンをこなすという新趣向もあります。アダー・シャルマーはシリーズ2作目ではほとんど意味がないオマケ・キャラだったのが本作では一転、ばっちりアクションをこなします。本作から登場のアンギーラ・ダルも同様。
アクション以外ではイスラム教過激派のテロ扇動者役グルシャン・デーヴァイヤーが圧巻。狂信的と知的を両立する印象的な悪役でした。
本作はインドでは現実にヒンドゥー教とイスラム教との摩擦が大きくなっている中で敢えてイスラム教徒のテロリストを描いていますが、作品全体のメッセージとしては「テロを行うイスラム教徒はほんの一部でインドの大多数のイスラム教徒は平和的で愛国的。だから両教徒とも仲良くしよう」で、ややナイーヴながらも優等生的にまとめています。
前作の欠点を上手く改善し、アクション・スリラーの娯楽作として十分に楽しめるものになっています。
音楽
このシリーズの音楽はオマケみたいなものなので、まあそれなり。全曲がプロモ・ソングのようなもので、「Akhiyaan Milavanga」のように作中にはないシーンをビデオに用いている曲もあります。
「Akhiyaan Milavanga」
ロンドンでのデート・ソングですが、作中ではそんな暇はありません。すべてが終わったあとなのかも。
「Tera Baap Aaya」
「Iraade Kar Buland」
ヴィドゥユト・ジャームワール カランヴィール役

確かにハンサムですが、アクション無しではそこまで秀でているとは言い難いだけに、捜査活動やヒロインとの恋愛要素は最低限にしてアクション中心に戻したのは成功でしょう。少なくともこのレベルでアクションをやっている俳優は他にいません。
グルシャン・デーヴァイヤー ブラーク・アンサーリー役

変人、変態のキャラクターを演じさせると絶妙の俳優です。悪役ではシリーズ3作中で最高(最悪=最も悪い)です。
アダー・シャルマー バヴナー役

シリーズ2作目からの連続出演。2作目は基本的に不要なオマケ・キャラ、おふざけキャラでしたが、本作ではアクションもバリバリこなす役に大変身。少なくともヒンディー映画ではこれまであまり役に恵まれていなかっただけに、今までで最も良い役かもしれません。
アンギーラー・ダル マリカー・スード役

CMモデルやウェブ・シリーズ出演を経てネットフリックス【Love per Square Foot】(2018)(『平方メートルの恋』)で知られるようになりました。本作はクールなイギリス情報局員の役でなかなかカッコいい。まだ主役級とは言えませんが、これからもいろいろ出てきそうな感じです。
【Commando 3】
やっぱりヴィドゥユト・ジャームワールのアクションに期待という人、アダー・シャルマーはあか抜けないところが良いと思う人、グルシャン・デーヴァイヤーの変態ぶりを見たい人、おすすめです。




ジョン自身も「最近はシリアスな作品が続きすぎた」と言っているくらいで、コメディへの出演はバズミー監督の【Welcome Back】(2015)以来。ここできっちりと路線の修正を図ってくるところは、バランス感覚に優れた人なのだと思います。
こちらは【No Entry】(2005)以来バズミー監督作品の常連で、その流れでの出演。今年はヒットした【Total Dhamaal】(2019)とコメディが2本になりましたが、万能俳優なので「コメディもやってる」という感じ。
美女タイプの女優ですが結構コメディいけます。本作などはコメディエンヌとして貫禄がありました。
【Housefull 4】(2019)への出演でようやく大作に出演するようになりましたが、ここで頑張らないとマルチ・スター映画女優で終わってしまう危険も。本作ではちょっと頭の足りない感じの役でまずまず良かったですが、もっと突き抜けても良かったかも。



シッダールトの2019年は本作と【Jabariya Jodi】。いずれものちに改心するチョイ悪役。さらにここ2年ほどの出演作はアクション、サスペンスばかり。【Hasee Toh Phasee】(2014)、【Kapoor & Sons】(2016)、【Baar Baar Dekho】(2016)のようなふつうのドラマでも久々に見てみたいところです。
こういう不気味な役は確かに上手いのですが、あまりに【Ek Villain】の二匹目のドジョウを狙った形で本作では本領発揮できませんでした。
あまり多くの演技を求められない「天使キャラ」でしたが、結構なハマり役。最近まで知りませんでしたが、ターラーはディズニー実写版『アラジン』で、ヒロインのジャスミン役をナオミ・スコットと最後まで争ったのだそうです。【Student of the Year 2】(2019)のためにカラン・ジョーハルが目を付けたのも伊達ではなったようです。
クレジットでは特別出演になっていましたが、かなり出演時間も長い役でした。酒場のダンサーで子持ち、主人公ラグーの情婦で、ふつうならばもう少し上の年齢の俳優がやるような役でした。特別出演だからこそのチャレンジかもしれませんが、新鮮味があってなかなか良かったです。

