【Tanhaji】

監督:オーム・ラウト Om Raut
出演:アジャイ・デーヴガン、サイフ・アリー・カーン、カージョール

2020年1月10日公開

トレイラー

ストーリー
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マラーター王国の創始者シヴァージー(シャラド・ケールカル)は自らの自由と引き換えにムガル皇帝アウラングゼーブに差し出した城のうちシンガハル城を取り戻そうと画策し、当時故郷に引きこもっていた中心タナージー・マールサーレー(アジャイ・デーヴガン)に奪還を依頼する。

タナージーはアウラングゼーブがシンガハル城の太守に任命したラージプートのウダイバーン・シン・ラトール(サイフ・アリー・カーン)の入場を阻止しようとするが失敗する。ウダイバーンは城の守備を固めただけでなく、巨砲を設置しシヴァージーを脅かす。状況を打開するべく、タナージーは難攻不落のシンガハル城の攻城戦を敢行する。
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アジャイ・デーヴガンが17世紀のマラーター王シヴァージーの武将だったタナージー・マールサレーを演じる歴史物。現在のプネ近郊にあるシンガハル城を巡り、ムガル皇帝アウラングゼーブから同城の太守に任ぜられたウダイバーン・シン・ラトールとタナージーとの間で戦われた1670年の「シンガハルの戦い」を描きます。

タナージーの妻役にリアルでも妻のカージョール。1670年のシンガハルの戦いでの敵将役にサイフ・アリー・カーン。アジャイとサイフの共演は【Omkara】(2006)以来。

【Bajirao Mastani】(2015)、【Panipat】(2019)などマラーターを描く作品は多いですが(【Manikarnika】(2019)『マニカルニカ』にも登場)、【Tanhaji】はマラーター王国の始祖であるシヴァージーの時代、しかも王国の設立前という古い時代の話。後にはマラーター王国の始祖として絶大な人気を誇るシヴァージーですが、当時最大版図を誇ったアウラングゼーブ帝のムガル帝国やイギリスなどを相手に結構際どい戦いを繰り広げていました。

そしてタナージー。シヴァージーの忠臣ということですが、実はそこまで有名な人物ではありません。【Tanhaji】で描かれるシンハガルの戦いもシヴァージーが身代金としてアウラングゼーブに差し出した城を取り返しただけで、ムガル帝国に決定的な打撃を与えたわけでも、マラーターに大きな領土をもたらしたわけでもありません。そして、タナージーがさほど有名ではないにもかかわらず、というよりも有名ではないからこそ、【Tanhaji】は非常に優れた娯楽作品になりました。

最近のヒンディー映画の歴史物ではほとんどといっていいくらい公開前あるいは公開後に「歴史問題」が起こります。「ある人物が不当に悪く(良く)描かれている」というのが主ですが、その多くは現在のインドにおけるヒンドゥー教とイスラム教の対立の構図をそのまま歴史描写に当てはめようとするために起きる問題です。イスラム教徒を悪役にして善良なヒンドゥー教徒がそれを打ち破るか、またはひどい仕打ちを受けるかいずれかの「史実」を設定し、それに合わないものには「史実でない」と文句を付ける。

しかし、【Tanhaji】はそんな歴史問題からは自由であるように見えます。サイフ演じる悪役ウダイバーン・シン・ラトールはラージプート(ヒンドゥー)で宗教対立の構図は避けられいます。またヒンドゥー教徒から見た歴史上の悪役トップ3に入るアウラングゼーブ帝は欧州系印インド人俳優ルーク・ケニーが演じてこちらもセーフ。

歴史物のしがらみを取り払った【Tanhaji】はひたすら面白さの追求に力を注いだ感じです。映画の「面白さ」にもいろいろありますが、【Tanhaji】の面白さはまさに活劇仕立ての攻城戦の迫力です。攻城戦といえば『バーフバリ』の城攻めのトンデモ戦法が話題になりましたが、【Tanhaji】も負けていません。敵部隊への空中からの襲撃、ありえない崖登り、矢や銃弾の雨をかいくぐっての城門への接近、そして巨大砲、とうよりもその導火線をめぐっての戦いと息をつく暇もありません。もちろんタナージーの家族の話などもあり、それはそれでよく出来ているのですが、はやりすべてはクライマックスの攻城戦のためにある感じです。

最近の歴史物としては無類の面白さ。必見です。

音楽
「Shankara Re Shankara」

「Maay Bhavani」

「Ghamand Kar」

 

アジャイ・デーヴガン       タナージー・マルサーレー役
観ている最中から「アジャイって昔なにか歴史物をやったことあった?」と思い、帰ってから調べてみたのですが、案の定、現代史の革命家・独立運動家バガト・シンを演じたくらいで近世・中世の歴史コス物はありませんでした。ちょっと意外な気がします。それにしてはタナージー、すごく似合ってました。

 

サイフ・アリー・カーン    ウダイバーン・シン・ラトール役
サイフは悪役でも評価が高い俳優ですが、フィルフェア賞の悪役賞(Best Performance in a Negative Role、2007年を最後に廃止)を受賞したのが【Omkara】(2007)、これまたアジャイ・デーヴガンとの共演作です。【Tanhaji】もサイフがいなければ成り立たなかったろうというくらいの好演した。

 


カージョール
  サヴィトリバーイー役
戦争物なので役が小さいのは仕方がないかと思っていたら最後(の最後)にやってくれました。絶対に最後(の最後)まで観ないと損です。

 

 

 

最近あまり出ていなかった【Youngistaan】(2014)のネーハー・シャルマーがウダイバーンに好かれて囚われの身になっている女性の役。

タナージーがあれほど苦労して取り戻したシンガハル城ですが、その後もマラーターとムガルの間で奪い合いが続き、【Tanhaji】から19年後の1689年にはムガルに、1693年にはまたマラーターに、1703年にムガルに、1706年にマラーターにと行ったり来たりでしたが、最後は1818年イギリス東インド会社の軍隊によって占領されました。


【Tanhaji】

痛快歴史活劇が観たい人、歴史コスのアジャイを見たい人、サイフの悪役ならぜひ観たいという人、おすすめです。

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