監督:プラブデーヴァー Prabhu Deva
出演:サルマーン・カーン、ソーナークシー・シンハー、サーイー・マーンジュレーカル、スディープ、アルバーズ・カーン、ワリーナー・フサイン(ソング出演)
2019年12月20日公開
トレイラー
ストーリー
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型破りの警察官チュルブル・バーンデー(サルマーン・カーン)は今日も悪人退治で活躍する一方、妻ラッジョー(ソーナークシー・シンハー)や弟のマッキー(アルバーズ・カーン)らと仲良く暮らしていた。
ある日、人身売買組織を摘発したチュルブルはその背後に悪徳実業家バッリー・シン(スディープ)がいることを知る。チュルブルとバッリーは古くからの因縁があった。チュルブルはラッジョーに若き日の自分とバッリー、そしてかつての想い人クシー(サーイー・マーンジュレーカル)とのエピソードを語り始める。
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サルマーン・カーンが腐敗しているが正義の警察官という型破りの役を演じて大ヒットし、サルマーンに一種の転機をもたらした【Dabangg】シリーズの3作目です。本シリーズは1作目【Dabangg】(2010)から【Dabangg 2】(2012)までが2年と間が短かったのに対し、その後しばらく3作目は作られなかったためもう続編はないのかと思い初めていました。それが前作から7年を置いての第3作目です。
1作ごとに監督が異なる本シリーズ。本作では娯楽映画の作り手として定評のあるプラブデーヴァーがシリーズ初監督。
主演のサルマーン・カーンをはじめ、ソーナークシー・シンハー、アルバーズ・カーン、ディンプル・カーパーディヤー、そして前作から本作までの間に故人となり本作ではわずかに登場のヴィノード・カンナーなどシリーズ1作目からの連続出演が多くいます。一方で回想シーンで登場する昔の恋人役に本作がデビューのサーイー・マーンジュレーカル、敵役にはカンナダ映画俳優でテルグ映画『マッキー』での悪役が印象的なスディープ。
本作ではトレイラーにあるように「どうしてダバングがダバングになったのか」というダバング誕生秘話ともいうべきエピソードが重要な位置を占めています。チュルブルがある事件をきっかけに因縁のあるバッリー(スディープ)と再会し、かつての恋人クシー(サーイー・マーンジュレーカル)をめぐるエピソードを回想するというもので、中盤に程々の長さの回想シーンが挟まれます。そして、現代に戻ってその時の因縁にカタを付けるというながれになっています。こうした構成のため【Dabangg 3】はストーリーにメリハリがあり、なんとなく話がだらだらと続く感じのあった【Dabangg 2】よりも良くなっています。
【Dabangg 3】のみどころの一つはスディープ演じるバッリー。シリーズでは1作目の悪役がソーヌー・スード、2作目がプラカーシュ・ラージですが、3作目のスディープはソーヌーの肉体とプラカーシュ・ラージの狡猾さを兼ね備えたシリーズ最凶の悪役になっています。
主役の3人は時の流れを感じさせません。サルマーン演じるチュルブルは「警部(Inspector)」から「警視補(Assistant Superintendent of Police)」に昇級していますが、キャラクターはまったく変わっていません。そのブレなさぶりは驚くばかり。ソーナークシー演じるラッジョーは今では子供がいるお母さんですが、こちらも可愛くもあり貫禄も(昔から)ありで変わらず。アルバーズ・カーン演じるマッキーは相も変らぬ徹底したダメ人間ぶり。
【Dabangg 3】は前作から時が経ち、監督も変わったにも関わらず、作風やキャラクターにおけるシリーズの一貫性を保っています。そのためシリーズの熱心なファンにはすんなりと受け入れられて楽しめる作品でしょう。一方で普通の観客にはやや飽きられる部分はあるのかもしれません。
音楽
前作【Dabangg 2】の音楽はすべての曲が【Dabangg】の曲に対応して作られており、別の言い方をすると両作は音楽上の構成がほとんど同じという異例のものでした。本作はさすがにすべてが同じではありませんが、やはり「Munni Bandnaam Hui」、「Hud Hud」がアレンジされて使われています。【Race】シリーズの「Allah Duhai Hai」と同じようにシリーズで繰り返し使って雰囲気を保つほうがいいのか、新たな曲に組み替えていくほうがいいのか難しいところです。
「Hud Hud」
シリーズのテーマ曲ですが、このビデオにあるサードゥー(行者)がエレキギターを弾きながら踊っているシーンはさすがにクレームが来て、本編ではカットされました。
「Munna Badnaam Hua」
1作目でマライカー・アローラー・カーンが出演して大ヒットした曲のカバーですが、タイトルの「Munni」が「Munna」に、「Hui」が「Hua」へとそれぞれ男性形に変化しています。すなわちサルマーンが主役をやるという意思表示。しかし、脇役には回りましたがデビュー【Loveyatri】(2018)から抜擢されたワリーナー・フサインは大健闘。
「Naina Lade」
1作目の「Tere Mast Do Nain」を彷彿とさせる曲ですが、サーイー・マーンジュレーカル、さすがにあの時のソーナークシーには敵いません。
「Yu Karke」
これぞソーナークシーという曲。
サルマーン・カーン チュルブル・パーンデー役
シリーズ前作【Dabangg 2】(2012)から【Dabangg 3】までの間にサルマーンが主演した作品には【Bajrangi Bhaijaan】(2016)(『バジュランギおじさんと小さな迷子』)、【Prem Ratan Dhan Payo】(2016)(『プレーム兄貴、王になる』)、【Tiger Zinda Hai】(2017)など、【Dabangg】とはまったく異なるキャラを演じた作品が並びます。しかし、それでも前作とまったく同じ姿で戻ってくるのはさすがサルマーンであり、チュルブルがサルマーンの適役だからでしょう。
スディープ バッリー・シン役
同じ悪役ながら『マッキー』のほうがゲスな感じは上で、【Dabangg 3】ではもう少し大物の悪役です。いろいろな意味で強力な悪役なため、チュルブルが前作、前々作に比べて本気度を一段階上げざるを得なくさせた感じでした。
ソーナークシー・シンハー ラッジョー役
【Dabangg】(2010)がデビューのソーナークシー。本作ではさすがの貫禄ミセス・パーンデー。もっとも、以前から貫禄ありましたが。ただ、出番自体はさほど多くありませんでした。
サーイー・マーンジュレーカル クシー役
監督・俳優として知られるマヘーシュ・マーンジュレーカルの娘。本作ではソーナークシー以上にメインのヒロインになるはずなのですが、それにしては存在感が薄かったです。ソーナークシーのデビューと比べるのは酷ですが、次があるのか心配です。
ボリウッドには人気のシリーズがいくつかありますが、その中でも実は【Dabangg】シリーズは異色の作りです。というのは作品が時間的に順番に並ぶ文字通りの続編でのシリーズであり、主要キャストは変わらずに続けて出演しています。普通のシリーズではないかと思われるかもしれませんが、実はこの普通が珍しい。たとえば【Dhoom】シリーズはアビシェーク・バッチャンとウダイ・チョープラーが連続出演ですが、作品ごとの真の主役である悪役は毎回異なっています。【Golmaal】シリーズはキャストが同じながら設定が毎回異なります。【Housefull】シリーズは一部キャストが共通ながら、特に女性陣は総入れ替えに近いぐらいに変わり、話も毎回違っています。
本作の特徴は中盤の回想シーン。大筋とは関係ありませんが面白いことに回想シーンの中にラッジョー(ソーナークシー)が登場します。チュルブルとラッジョーは【Dabangg】の中ですでにチュルブルが警官になったあとで出会っているわけですが、実はその出会い以前から以外なつながりがあったことがわかります。
【Dabangg】
帰ってきたチュルブル大歓迎という人、マッキーは今回はどんなダメぶりか見たい人、ヴィノード・カンナーの見納めをしたい人、スディープのファンの人、おすすめです。