【Marjaavaan】

監督:ミラープ・ザーヴェーリー Milap Zaveri
出演:シッダールト・マルホートラ、リテーシュ・デーシュムク、ターラー・スターリヤー、ラクル・プリート・シン(特別出演)、ナーサル、ラヴィ・キシャン、ノーラー・ファテーヒー(アイテム・ソング出演)

2019年11月15日公開

トレイラー

 

ストーリー

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ラグー(シッダールト・マルホートラ)はムンバイの地元マフィアのドン、ナーラーヤン(ナーサル)の下で働くギャング。その忠実な働きぶりから取り立てられ、今やナーラーヤンの片腕として働くようになっているが、ナーラーヤンの実の息子で生まれつきの小男のヴィシュヌ(リテーシュ・デーシュムク)にはそれが面白くなく、事あるごとにラグーに嫌がらせをする。

ある日、ラグーはカシミール出身で子供たち音楽を教えているゾーヤー(ターラー・スターリヤー)と出会う。口がきけないながら明るく純粋な心を持つゾーヤーにラグーは強く惹かれていく。だが、そのことを知ったヴィシュヌはラグーを追い落とすためにゾーヤーに狙いを付けるのだった。

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ギャングとして生きてきた青年の人生がある純粋な心を持つ女性との運命的な出会いから変わっていく様を描くアクション・ラブストーリー。

出演はシッダールト・マルホートラ、リテーシュ・デーシュムクという【Ek Villain】(2014)で共演の2人。ヒロインは【Student of the Year 2】(2019)でデビューしたターラー・スターリヤーが早くも2作目。特別出演でラクル・プリート・シン。

監督のミラープ・ザーヴェーリーは脚本家出身で、【Heyy Baby】(2007)、【Housefull】(2010)、【Desi Boyz】(2011)などのほか、【Ek Villain】の脚本も担当しています。監督としては前作のジョン・エイブラハム主演【Satyameva Jayate】(2018)がまずまずのヒットになりました。

ギャングや悪の組織で働くなど世のはぐれ者として生きてきた主人公がヒロインとの出会いによって改心するという話は、様々なヴァリエーションはありますがインド映画の基本プロットの一つです。昔ながらのインド映画の特徴として主人公はヒーローでなければならず、ヒロインとの恋愛は絶対必要で、悪との対決も入れるとなれば当然出てくるストーリーで、さらに俳優に善悪両方を演じさせることができるという映画製作上のメリットもあります。

【Marjaavaan】もそうした改心のストーリーですが、ストーリー構成や人物設定・描写、アクションなど多くの要素の完成度が足りず、全体としての出来もいま一つでした。ある作品を別の作品と比較するのは良くないのですが、出演者や脚本家、そしてテーマも共通する【Ek Villain】との比較されるのは仕方ないでしょう。

まず構成がヘンです。まるでインターバル直前にクライマックスがあるような感じです。二回クライマックスがあるといえば聞こえはいいですが、最初のクライマックスに比べて本当のクライマックス(最後)はあまり盛り上がらず、尻すぼみの印象があります。それ以上のインターバル後、クライマックスに向かって進んで行かずに右往左往する感じの中だるみが作品の出来を損なっています。

人物描写ではリテーシュ・デーシュムク演じるヴィシュヌが、リテーシュの怪演にもかかわらず、中途半端なキャラクターに終わったことが【Ek Villain】との差になりました。生まれつきの矮躯で父からも軽んじられていると考えているコンプレックスの塊のような人物ですが、かといってそれが作中での行動の説明になっていません。【Ek Villain】での一切の説明を拒絶する絶対悪のリテーシュのほうが印象が圧倒的です。シッダールト演じるラグーの心理描写もインターバル後が特にはっきりせず、中だるみの原因になっています。そのくせ友人絡みエピソードはやり過ぎで余計に感じました。どうにもバランスが悪い。

主役の3人の見た目が良いのが救いです。シッダールトは善悪のキャラともにかっこいいです。アクションはあまりカッコよくないが、これは演出のせいか。リテーシュの小男はとにかく不気味。ラーラーの天使キャラはぴったりとハマっています。

前半の急ぎ過ぎと後半のノロすぎがすべての元凶。まとまりに欠けるながらも個々には良いところもあるので、いまいちノリきれないところは少し我慢して観るのがいいでしょう。

音楽
良い曲が多いのですが、アイテム・ソングが2曲(アイテム風を入れると3曲)もあるのは多すぎでしょう。しかも、ヌスラト・バルーチャーのアイテム・ソング(歌:ヨーヨー・ハニー・シン)は作中はもちろんプロモ期間中にもほとんど使われませんでした。もったいない。

「Kinna Sona」

「神は君をなって美しく作ったのだろう」という曲。天使キャラのターラーにシッダールトがメロメロに。

「Tum Hi Aana」

「Haiya Ho」

ラクル・プリート・シンは特別出演ながら出演時間がかなりあるのでアイテム・ソングとは言えないかもしれませんが、アイテム的。

「Ek Toh Kum Zindagani」

こちらはダンス・クイーン、ノーラー・ファテーヒーによる正真正銘のアイテム・ソング。

 

シッダールト・マルホートラ  ラグー役

シッダールトの2019年は本作と【Jabariya Jodi】。いずれものちに改心するチョイ悪役。さらにここ2年ほどの出演作はアクション、サスペンスばかり。【Hasee Toh Phasee】(2014)、【Kapoor & Sons】(2016)、【Baar Baar Dekho】(2016)のようなふつうのドラマでも久々に見てみたいところです。

リテーシュ・デーシュムク  ヴィシュヌ役

こういう不気味な役は確かに上手いのですが、あまりに【Ek Villain】の二匹目のドジョウを狙った形で本作では本領発揮できませんでした。

 

 

 

 

ターラー・スターリヤー  ゾーヤー役

あまり多くの演技を求められない「天使キャラ」でしたが、結構なハマり役。最近まで知りませんでしたが、ターラーはディズニー実写版『アラジン』で、ヒロインのジャスミン役をナオミ・スコットと最後まで争ったのだそうです。【Student of the Year 2】(2019)のためにカラン・ジョーハルが目を付けたのも伊達ではなったようです。

ラクル・プリート・シン  アールズー役

クレジットでは特別出演になっていましたが、かなり出演時間も長い役でした。酒場のダンサーで子持ち、主人公ラグーの情婦で、ふつうならばもう少し上の年齢の俳優がやるような役でした。特別出演だからこそのチャレンジかもしれませんが、新鮮味があってなかなか良かったです。

 

【Marjaavaan】
悪シドは好きという人、ターラー・スターリヤーの天使キャラが見たい人、【Zero】よりは小男の意味があるんじゃないかと思う人、おすすめです。

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